2013年01月10日

マイ・ブラザー』マイ

子供が笑顔でいる同じ時間、父親は戦地で地獄を見る. 弟が人生に立ち直りかける同じ時間、兄は戦地で世界の果てを見る. オリジナルであるデンマーク映画『ある愛の風景』は未見ですが、やはりジム・シェリダン監督が描く作品は静かに心に響いてくる秀作. 私生活でもお互いの自宅で演技練習をするほど仲のいいトビー・マグアイア、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ギレンホールの表情がいかにもどこにでもある風景に感じる映画でしたよ. ジム・シェリダン監督を語る上で絶対に外せないキーワード、北アイルランド紛争. これまで『父の祈りを』や 『ボクサー』 のようにストレートに描いたり、『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』やこの作品のように間接的に描いたりしてきたこの監督ですが、そのメッセージは常に「まだ北アイルランド紛争は終わっていない」ということだと思うんですよね. とは言ってもこの映画が描いているのはアフガニスタンに出征する兵士とその家族のお話です. でもどんな戦争であれ紛争であれ、戦地に赴く兵士がいれば、そこに残される家族もいます. そして戦地に赴いた兵士が戦死すれば家族には悲しみが残り、戦地に赴いた兵士が帰還すれば家族には苦しみが残る. 無事に戻ってきたからよかったよかったでは済まないのが現実. 恐らくジム・シェリダン監督が言いたいことはこれではないかと思うんですよね. そんなメッセージをこの監督はグレースを基点に兄サムと弟トミーを鏡写しにするかのように対比させることで描き出しているのが秀逸で、特に出所したばかりのトミーが激怒したサムが出征する前夜の食卓と、サムが激怒した彼の帰還を祝う食卓を対比させたのは非常に分かりやすく、そして巧い演出. しかもそれを可愛くて人気者の妹に対してコンプレックスを持っているイザベルの涙を使って、さらに印象深く見せるのも素晴らしいこと. 恐らく北アイルランドでもサムのように優しかった父親、家族思いだった夫が戦地で地獄を見て、人間が変わったかのように無事に帰還した例はいくつもあったのでしょう. そしてそんな一人の父親、一人の夫に直面した家族がどれだけ苦しみ、紛争の爪跡を戦地に赴いたことのない人たちの心にまで残しているかを監督もたくさん見聞きしてきたことでしょう. でも現実ではそういったことは体験者以外はほとんど知らないこと. refotsimpdend 兵士が銃を置けばそこで戦争は終わるのではなく、兵士とその家族が心の安らぎを得てこそ本当の意味での戦争の終結. それをこの監督はかつての北アイルランドの人たちと同じ状況になりつつある現代のアメリカ人たちに訴えるために、この映画を撮ったのではないかと思うんですよね. キッチンはリフォームすれば新しくきれいなキッチンになる. でも人生はリフォームなんてできない. 家族の元に戻るため仲間を殺したという事実だけは白いペンキで塗り潰すこともできない. サムがトミーにグレースと寝たのか? と執拗に問いかけたのも、サムにとって妻や娘たちだけが頼りであることの裏返し. 姪たちや義姉グレースの笑顔で人生を立ち直らせた弟トミーがあの食事会に女性を誘ったのも、無意識のうちに姪たちやグレースとの距離を置き、兄サムに誰もこの家族を引き裂く者がいないことを諭すための行動だったのではないでしょうか. ラストでサムがグレースに戦地での真実を話すくだりも、この家族の戦争終結への道はここから始まる. 長く険しい道かも知れないけど、ここから全てが始まる. そんな優しいメッセージを感じました. 深夜らじお@の映画館 はまたジム・シェリダンとダニエル・デイ・ルイスのタッグ作品が見てみたいです.
posted by AizawaNona at 00:26| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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